株式会社セイリョウ【小林隆文社長インタビュー】

株式会社セイリョウの代表取締役社長である小林隆文。
スタッフと共に汗水流して働きながらも、社会情勢にアンテナを張り、会社を日々成長させてきた。
小林社長の考えや願いを存分に語ってもらうコーナー。
(外部ライター取材)

目次

◆いよいよ開始2024年問題
◆セイリョウのピンチ
 ①2023年、年末に起こった大事件
 ②それでも残ってくれた光
 ③泣きっ面に蜂、さらなる追い打ちとなる出来事
 ④株式会社セイリョウの魅力を発信する

いよいよ開始2024年問題について①

※『2024年問題』とは、運送業界は2024年4月から時間外労働に対して、
上限が年間960時間に制限され、それに伴い発生する問題の総称

Q、2024年4月から行われる
運送業界時間外労働時間の制限の話を聞いた時、社長は率直にどう思いましたか?

小林「これは『チャンス』だと思いました。
その理由は、うちはその準備ができていると思うからです。

過去には労働基準監督署に駆け込むスタッフがいて、
その都度そういう対応して改善を図ってきました。

株式会社セイリョウは運送業界にとって、
大変非常識な労働形態に変化したんだと思っています。

運送業界は時間外労働をしてなんぼの世界です。

それをうちではやらずに、
もしもそれを期待して入社しようとする人がいてもお断りをしてきました。

仕事ばかりの人よりも、
生活を充実させたいという人を集めてきたんです。

ドライバーや運送を行ってきた人の中にも、
必ずしも長時間労働で稼ぎたいという人ばかりではないということです。

そんな方々が働きやすい労働環境をつくってきました」

Q、2024年問題に直面した時に、株式会社セイリョウでは何に取り組んでいこうと思いますか?

小林「より人材採用に取り組んでいこうと考えています。

2024年問題が出てくる前から、
シェアを広げていくこと、労働環境を整えていくことをしていました。

そうすることによって、
今まで運送業界にはいなかった人材の入社希望者が増えてきました。

例えば60代以上の高齢者の方やWワーカーの人たちです。

今までの仕事を1人で全て行わずに、
1.5人~2人でやるという発想に切り替えていくことが大切になっていくと思います。

そうすると人が取れる会社が生き残っていくと思うんです」

Q、具体的な数字として何人ほしいですか?

小林「10人以上です。

コロナが落ち着いて、
今まさに仕事がどんどんとれる時期になってきています。

しかし、荷物を持っているお客様が、
それについてこられていない状況です。

いままで通りに業者が見つかるだろうと思っていても、
こんなに物価が上がって、ガソリン代も上がってしまったら、
今までのような賃金ではやっていけない状況です。

しかし、お客様はその荷物はどうにかしないといけない。

だから思いのほか運送会社側の言い値が叶ってしまう現状になっています。

そうすると、やはりどんどん人が欲しいですよね」

Q、より人材を入れていくにはどのようなことに力を入れていきますか?

小林「株式会社セイリョウは社風のいい会社ですよ」と
もっと露出やアピールをしていきたいと考えています。

HPの事例記事を豊富にしていったり、
SNSも発信していったりして、
社内を見てもらうことに力を入れていこうと考えています。

いくら求人で
『働きやすい会社ですよ』『アットホームな会社です』と謳っても響かないですからね」

Q、事例の記事を読まれているという感触はありますか?

小林「手ごたえはありますね。

本気で入社を考えている方はもちろん、
若い方は結構読んでいます。

『書かれていますよね』というお声を聞きますので。

若い人はインスタがきっかけで、
HPに入ってくるという流れです。

まさにそういう時代になってきたんだなと思っていますし、
2024年問題は、そういうのも駆使してチャンスをものにしていく時だと思っています」

【小林隆文社長インタビュー】いよいよ開始2024年問題について②

※『2024年問題』とは、運送業界は2024年4月から時間外労働に対して、
上限が年間960時間に制限され、それに伴い発生する問題の総称

Q、小林社長はこの政策を「チャンス」と言いましたが、政府のこの考えは良いものと思いましたか?

小林「いや、まったく思っていません。

現状を全く理解していないですよね。

僕のような考えでやっている社長さんがいっぱいいれば、
この政策はチャンスになるのですが…。

だから同業の中に今回の政策をきっかけに廃業するか、
Ⅿ&Aをするかと岐路に立たされている会社が出てきました。

業界の中の人の常識やレベルを政府は理解していないなと感じました。

ただ、うちはやはり勉強しているので、
それをチャンスと感じられているんだと思います。

見えないところを…
まさにインナーマッスルをコツコツと
鍛えるように整えてきました。

ただ売り上げやひたすらに
物を運ぶことだけに重きを置いてきた会社は、
この政策はピンチだと感じていることでしょう」

Q、小林社長は実際に同業者の方からどのような声を聞きましたか?

小林「弊社のようにインナーマッスルを
鍛えてきた会社の社長さんは、
割と対岸の火事のような感覚で観ている人が多いですね。

『俺らは関係なく前に進んでいるよ』という感じで。

でも逆に学んでない、勉強していない方たちは結構苦しんでいると思いました。

仕事を削り、減車をしないといけない。

『(こんな状態での)運送屋ではやっていけない』ということをちらほら聞きます。

あと、会社を売る方が結構いるんですよね。

うちの規模よりも大きな会社が、そういうことをし始めているんです。

要するに、この現状の中で会社の未来を見据えられず、
あきらめてしまったんだと思います。

長時間労働をしないとドライバーの給料を払えないという思考に
縛られている社長さんは一生そのままですからね。

2024年問題が分厚い壁にしか見えていないと思います」

Q、思わぬ痛手を負ってしまった場合どうしますか?

小林「あまりそのようなことは考えていません。

やっぱりチャンスということでしか考えられないですね。

今までうちがやろうとしてきたことを、
国が後押ししてくれていると考えています。

そもそも、なぜ平気で13時間働かせられるの?
と疑問に思っていましたが、
業界ではそれが当たり前に根付いてしまっていて、
特例とされてきました。

やはりちゃんちゃらおかしな話だったんですよ」

Q、それでは不安はないと?

小林「強いて言うなら『自動運転の発展』ですかね。

しかしそれも、すぐに発展したとしても、
大型車からの導入の可能性が高いです。

もし、弊社が主に使っている2tトラックにまで自動運転の波が来た場合は、
何か対策を考えないといけないなと思っています」

Q、政府が掲げた政策によって、運送業界はどのような方向に進んでいくと思いますか?

小林「まず自動運転が発展していくとは思うのですが、
それ以上に運送業で働く人が減っていく現状になっていくと感じています。

理由は今のどの世代でも、
運送業になりたいっていう人が少なくなってきているからです。

運送業に限らず、ブルーカラーの職業になりたい人が減ってきていますね。

サービスはほしいけどやりたい人がいないという現状です。

それが今よりももっとひどくなっていく。

そうなると、その業界の価格が上がり、
価値が付いていくと思います。

『では、より新規参入していくんじゃないか?』
と思われると思うのですが、
より一層人は取れなくなってくると考えています。

なんとなく、今の若い子の働くマインドがデスクワークに行きがちです。

いろんな業界の人と話しますが、
どこも『うちの業界は人気がない』と口に出します。

どの業界もだと、
いったいどこに人がいるんだ?と疑問を持ってしまいます。

やっぱり中小企業のブルーカラー職じゃないところに人は
集まってきてしまっているのが現状です。

業界が人材不足になったら、
先ほど言ったように価値が上がってきますので、
生き残りさえすればより価値を上げて利益をしっかりと取れると思います。

これから生き残り戦略をしっかり立てることが大切です」

株式会社セイリョウのピンチ

①2023年、年末に起こった大事件

大量離職

 2024年問題を目前に、株式会社セイリョウではその政策に向け、準備をしていました。

とは言っても、
弊社では、以前から2024年問題のようなことがあっても
耐えていけるようなシステムを構築していたので、
何も問題を感じていませんでした。

 あとは2024年を迎えるだけと思っていた矢先、
大きな出来事が株式会社セイリョウを揺るがします。

それは前代未聞の大量離職です。

 始まりはベテラン事務スタッフが急に退職を願い出たことからです。

理由は家庭の事情で仕事はできなくなってしまうという内容でした。

その後、そのスタッフと仲がよかった新人スタッフが退職願いを提出、
さらに新卒の若いスタッフが5人中4人退職届を提出してしまいました。

 これからの株式会社セイリョウを背負っていける力が、
一気に失われてしまった瞬間でした。

表には見せなかった裏の顔

 これは何かあったのではないかと思い、
そのベテランスタッフ退職後に、既存スタッフにヒアリングを行いました。

そうすると、ベテランスタッフの表には見せなかった、裏の顔を知りました。

例えば仕事をお願いすると、
表では「やります」と言っていたのが、
実際はやれていなかったということ。

そして、上司がいない場所で不の態度を露骨に出していたようだったのです。

そして、その裏と表の使い分けがすごく上手だったため、
社長や幹部は気がつくことができませんでした。

振り返ってみると、
確かに「あれ?」と思うシーンはありましたが、
些細なことだと思い、スルーしてしまっていました。

それをスルーせずにしっかりと向き合っていればよかったのかもしれません。

そして、それが若いスタッフに少なからず影響していたようです。

その人が発する愚痴に左右されてしまい、
周りのスタッフ、特に若いスタッフも気持ちが持っていかれてしまったようです。

 そのベテランスタッフが辞める際、
若いスタッフに伝えた一言があります。

それ聞いた時、私はすごくショックを受けました。

その言葉とは「頑張ったけど、私が会社を変えられなくてごめんね」という言葉です。

たった一言だったけれど、大きな影響を若いスタッフ達に与えたなと思います。

この言葉を聞いた若いスタッフ達は次々と辞めていってしまいました。

この言葉を聴いて、若いスタッフはどんなことを思ったのだろう…
と今でも考えてしまいます。

ベテランだからとスルーしてはいけない

 思い返せば、無意識にサインのようなものを送っていたのかもしれません。

それを私たちは「ベテランだから」「いつものことだから」と
“いつもの景色”と思ってスルーをしてしまっていました。

 日ごろから常にマイナスな言葉を使う人には、
注目しないといけなかったのだと後悔しました。

そういう人は、
実はかなり深刻な状況だったと気がつかなければならなかったのだと。

そしてその深刻な状況は、
周りにも伝達され、知らぬ間に大変な状況まで傾くのだと思い知らされました。


②それでも残ってくれた光

雰囲気にのまれて同調

 ベテランのスタッフが徐々に見せてきた、
小さく不可解な行動。本当に些細で日常的なものだったからこそ
「ベテランのあの人なら大丈夫だろう」「いつものこと」と思い、
スルーしてきてしまいました。

また、周りもその雰囲気にのまれ、
深く考えず、同調するようになってしまっていたようです。

意見に従わなければ何をされるかわからないという、
雰囲気が作り上げられてしまっていたように感じます。

肯定的な否定

 やはり会社としてやってはいけない態度を、
本人としっかり向き合い
注意してかなければならなかったのだと反省しています。

誰にも言われなかったからこそ、好き勝手にやってしまったのだと思います。

 必要だったのが「肯定的な否定をしていく」ということです。

問題点を肯定してそれを治させていく、
治すことができるように
促していくということが大切だったと思いました。

そして、しっかりと会社の価値観を共有し、
気持ちを変えてもらうことが、
組織内で働くために必要なことだと思いました。

入社の入り口を考え直す

 株式会社セイリョウが今の状態になる前、
まだ“運送業のうんちゃん“のような会社をしていたころ、
今以上にたくさんの人材が退職していきました。

離職率は今よりも格段に上でした。

出ていってしまった分、
補充しないといけないため、
人数合わせ、
働く人の手をとにかく確保しないといけないため、
どんな人でも入れていました。

そのため、お金をもらえればいいという人材もどんどん入ってきました。

会社内の個々の目線はバラバラです。

その影響が、今回まで引きずり大量離職に繋がりました。

 今後は、入社させる人材をしっかりと選定しないといけないのだと思いました。

「僕はやめる気はないです」

 新卒で入社した若いスタッフが軒並み辞めてしまい、
残ったのはたった1人です。

その1人は本当に仕事がうまくいかず、どん底を経験しました。

社長の私が何度も注意をして、
どうして注意されたかを
課長が一緒に面談などで振り返りをしていきました。

その回数は実に41回。

 そこまでいってしまったら、
逆にやめたくなるのではないかと思われるかもしれませんが、
彼はその分考える時間が多くなったため、
会社の価値観や自分が何をしなければいけないのかということを、
じっくりと見つめることができたようです。

そして、自分以外の新卒が辞めてしまった直後、
彼は私と新人育成チームのスタッフに
「僕はやめる気はないです」と言ってくれました。

 今まで株式会社セイリョウでは
新卒のスタッフを中心に新人育成の研修を行ってきました。

それがしっかりと実ったのだと思い、
小さな光を感じることができました。

 一筋の光を感じながらも、
これから辞めていってしまったスタッフの分を補うために、
人材を募集しなければなりません。

 しかし、思いがけないピンチはこれからも続きました。


③泣きっ面に蜂、さらなる追い打ちとなる出来事

続くスタッフの退職

 昨年末に起こってしまった大量離職。

「何とか残ったスタッフでやりくりをしていかないといけない」
と、日々考えていました。

 スタッフに、より強い負担を与え過ぎないように、
しかし、利益を損なわないように、と考えを巡らせ、
スタッフ配置の変更も視野に入れていました。

 とある入社1年目の事務スタッフに
部門異動してもらおうと思っていました。

そのスタッフは、頑張って日々業務をこなしてくれていたものの、
能力が追いついていないのではないかと判断し、
今回の考えにいたりました。

そう思っていた矢先、思いがけない言葉をそのスタッフから聞くことになります。

 突然、そのスタッフから、
退職願いを出されてしまいました。

今までのように、能力の向上を臨んでいたため、
きっと苦しくなってしまっていたのだと思いました。

心が乱れる時

つくづく人材育成というのは難しいと感じました。

違うポジションであれば、
今よりも苦しくなくやっていけるのではないかと思っていましたが、
本人の中で気持ちは決まっていたのでしょう。

私も、昨年末の大量離職からなんとか気を取り直して頑張っていこうと思った矢先、
このようなことが起こってしまい、
いつもなら「こういう時は変わっていく時、変化していく時」
と前向きにとらえられるタイプなのですが、
感情が追いついていかず、心が乱れてしまっています。

こういう時は事故も起こしやすくなるので、
気をつけないといけないと思っているとこです。

入ってこない応募

 昨年末から今年2月にかけてスタッフの退職が相次ぎ、
心も少し乱れてしまっているこの頃ですが、
そうクヨクヨしている場合ではありません。

人材は、すぐさま補充しないといけません。

 いつものように、すぐに求人を出しました。

それは昨年末に引き続き行っていることです。

しかし、以前に比べて応募が少ない、
むしろ、応募がないに等しい状態です。

 これはどこも人材不足に陥り、
他の企業も求人募集(求人広告、求人サイトへの載せ方)
について研究し始めたためであろうと考えています。

株式会社セイリョウが今まで行っていた求人への工夫が、
いよいよ通用しなくなってきたのだと思います。
 

人材確保のために…

 今後も、株式会社セイリョウでは求人を出して人を呼び込もうと思っています。

しかし今までのやり方では何も進歩がありません。

 そこで考えたことは「より目立つことをする」ということです。

もちろん、安直に目立つ広告を出す、
というわけではありません。

いろんなところに出向いて、
株式会社セイリョウにどんどん興味を持ってもらおうと考えています。

 大切なのは株式会社セイリョウで何ができるか、
何が魅力かということです。

その魅力を存分に発信していきたいと思っています。


④株式会社セイリョウの魅力を発信する

運送業を通して人材育成をする会社

大量離職に伴う人材不足を補うために、
求人ではより目立つことをしていこうと考えている現状。

それは目立つ広告を出すわけではなく、
新卒採用を狙い、少しでも株式会社セイリョウに興味を持ってもらうことです。

そこでより強調して発信したいと考えていることは
「運送業を通して人材育成をしていける会社」だということです。

運送業という職種は、
まだまだ“トラックの運ちゃん”の印象を拭えません。

さらに中小企業では、
仕事をして利益を出してくれればそれでいい、
日常の業務内では利益を出すだけで精いっぱいだと、
丁寧に会社の研修やマナーを教えるということはあまりありません。

大企業に入らないと、そのような人材として成長できない、
勉強できないというイメージがあります。

そんな中で、運送業で社会人のマナーや仕事をする上での心構えが学べる
入りやすい中小企業だと発信していけば、
より意識の高い人材の確保ができるのではないかと考えています。

何をしにここに来たかがわかる人

 なぜ、就職するのか、就職しなければならないのか。

その理由は人それぞれですが、
今まで株式会社セイリョウに入社してくれたスタッフを見ると、
長く続けてくれたスタッフ、すぐにやめてしまったスタッフ、
それぞれの考え方の傾向がわかってきました。

 もちろん必ずしもそれに当てはまるわけではありませんが、
長く続ける人は
「ここに何をし(学び)に来たのかがわかっている」ということです。

そしてそれが日常の節々の言葉からもうかがえます。

そのようなスタッフは会社で起こることを自分のことのように話します。

「〇〇なことがあったんだよ」
『それじゃあ▲▲して直しいかないとダメですね。自分も気をつけます』ととらえます。

このようなスタッフは会社にとって、とても大切な存在になります。

 しかし、なんとなく仕事を決めてきたという人は、
言葉の節々にどこか他人事ということをうかがえます。

しっかりと人材を厳選すること

 以前は、後者のようなスタッフもかまわず入れていましたが、
長く務めてもらうためには、弊社の経営理念を知ってもらい、
それに賛同してくれる人を入社させることが大切だと思いました。

 残ってくれた従業員の中で「僕はやめませんから」と言ってくれた子のように、
経営理念を理解し、弊社の考えに賛同してくれるスタッフで、
より新しい株式会社セイリョウを作っていきたいと考えています。