株式会社セイリョウ【小林隆文社長インタビュー】

株式会社セイリョウの代表取締役社長である小林隆文。
スタッフと共に汗水流して働きながらも、社会情勢にアンテナを張り、会社を日々成長させてきた。
小林社長の考えや願いを存分に語ってもらうコーナー。
(外部ライター取材)

目次

◆いよいよ開始2024年問題
◆セイリョウのピンチ
 ①2023年、年末に起こった大事件
 ②それでも残ってくれた光
 ③泣きっ面に蜂、さらなる追い打ちとなる出来事
 ④株式会社セイリョウの魅力を発信する
 ⑤マイルールに縛られていた現状からの脱却1
 ⑥マイルールに縛られていた現状からの脱却2
 ⑦マイルールが作られてしまう人材の傾向
 ⑧ルーティーン化することで強い企業に
◆社長の人生と会社の人生

いよいよ開始2024年問題について①

※『2024年問題』とは、運送業界は2024年4月から時間外労働に対して、
上限が年間960時間に制限され、それに伴い発生する問題の総称

Q、2024年4月から行われる
運送業界時間外労働時間の制限の話を聞いた時、社長は率直にどう思いましたか?

小林「これは『チャンス』だと思いました。
その理由は、うちはその準備ができていると思うからです。

過去には労働基準監督署に駆け込むスタッフがいて、
その都度そういう対応して改善を図ってきました。

株式会社セイリョウは運送業界にとって、
大変非常識な労働形態に変化したんだと思っています。

運送業界は時間外労働をしてなんぼの世界です。

それをうちではやらずに、
もしもそれを期待して入社しようとする人がいてもお断りをしてきました。

仕事ばかりの人よりも、
生活を充実させたいという人を集めてきたんです。

ドライバーや運送を行ってきた人の中にも、
必ずしも長時間労働で稼ぎたいという人ばかりではないということです。

そんな方々が働きやすい労働環境をつくってきました」

Q、2024年問題に直面した時に、株式会社セイリョウでは何に取り組んでいこうと思いますか?

小林「より人材採用に取り組んでいこうと考えています。

2024年問題が出てくる前から、
シェアを広げていくこと、労働環境を整えていくことをしていました。

そうすることによって、
今まで運送業界にはいなかった人材の入社希望者が増えてきました。

例えば60代以上の高齢者の方やWワーカーの人たちです。

今までの仕事を1人で全て行わずに、
1.5人~2人でやるという発想に切り替えていくことが大切になっていくと思います。

そうすると人が取れる会社が生き残っていくと思うんです」

Q、具体的な数字として何人ほしいですか?

小林「10人以上です。

コロナが落ち着いて、
今まさに仕事がどんどんとれる時期になってきています。

しかし、荷物を持っているお客様が、
それについてこられていない状況です。

いままで通りに業者が見つかるだろうと思っていても、
こんなに物価が上がって、ガソリン代も上がってしまったら、
今までのような賃金ではやっていけない状況です。

しかし、お客様はその荷物はどうにかしないといけない。

だから思いのほか運送会社側の言い値が叶ってしまう現状になっています。

そうすると、やはりどんどん人が欲しいですよね」

Q、より人材を入れていくにはどのようなことに力を入れていきますか?

小林「株式会社セイリョウは社風のいい会社ですよ」と
もっと露出やアピールをしていきたいと考えています。

HPの事例記事を豊富にしていったり、
SNSも発信していったりして、
社内を見てもらうことに力を入れていこうと考えています。

いくら求人で
『働きやすい会社ですよ』『アットホームな会社です』と謳っても響かないですからね」

Q、事例の記事を読まれているという感触はありますか?

小林「手ごたえはありますね。

本気で入社を考えている方はもちろん、
若い方は結構読んでいます。

『書かれていますよね』というお声を聞きますので。

若い人はインスタがきっかけで、
HPに入ってくるという流れです。

まさにそういう時代になってきたんだなと思っていますし、
2024年問題は、そういうのも駆使してチャンスをものにしていく時だと思っています」

【小林隆文社長インタビュー】いよいよ開始2024年問題について②

※『2024年問題』とは、運送業界は2024年4月から時間外労働に対して、
上限が年間960時間に制限され、それに伴い発生する問題の総称

Q、小林社長はこの政策を「チャンス」と言いましたが、政府のこの考えは良いものと思いましたか?

小林「いや、まったく思っていません。

現状を全く理解していないですよね。

僕のような考えでやっている社長さんがいっぱいいれば、
この政策はチャンスになるのですが…。

だから同業の中に今回の政策をきっかけに廃業するか、
Ⅿ&Aをするかと岐路に立たされている会社が出てきました。

業界の中の人の常識やレベルを政府は理解していないなと感じました。

ただ、うちはやはり勉強しているので、
それをチャンスと感じられているんだと思います。

見えないところを…
まさにインナーマッスルをコツコツと
鍛えるように整えてきました。

ただ売り上げやひたすらに
物を運ぶことだけに重きを置いてきた会社は、
この政策はピンチだと感じていることでしょう」

Q、小林社長は実際に同業者の方からどのような声を聞きましたか?

小林「弊社のようにインナーマッスルを
鍛えてきた会社の社長さんは、
割と対岸の火事のような感覚で観ている人が多いですね。

『俺らは関係なく前に進んでいるよ』という感じで。

でも逆に学んでない、勉強していない方たちは結構苦しんでいると思いました。

仕事を削り、減車をしないといけない。

『(こんな状態での)運送屋ではやっていけない』ということをちらほら聞きます。

あと、会社を売る方が結構いるんですよね。

うちの規模よりも大きな会社が、そういうことをし始めているんです。

要するに、この現状の中で会社の未来を見据えられず、
あきらめてしまったんだと思います。

長時間労働をしないとドライバーの給料を払えないという思考に
縛られている社長さんは一生そのままですからね。

2024年問題が分厚い壁にしか見えていないと思います」

Q、思わぬ痛手を負ってしまった場合どうしますか?

小林「あまりそのようなことは考えていません。

やっぱりチャンスということでしか考えられないですね。

今までうちがやろうとしてきたことを、
国が後押ししてくれていると考えています。

そもそも、なぜ平気で13時間働かせられるの?
と疑問に思っていましたが、
業界ではそれが当たり前に根付いてしまっていて、
特例とされてきました。

やはりちゃんちゃらおかしな話だったんですよ」

Q、それでは不安はないと?

小林「強いて言うなら『自動運転の発展』ですかね。

しかしそれも、すぐに発展したとしても、
大型車からの導入の可能性が高いです。

もし、弊社が主に使っている2tトラックにまで自動運転の波が来た場合は、
何か対策を考えないといけないなと思っています」

Q、政府が掲げた政策によって、運送業界はどのような方向に進んでいくと思いますか?

小林「まず自動運転が発展していくとは思うのですが、
それ以上に運送業で働く人が減っていく現状になっていくと感じています。

理由は今のどの世代でも、
運送業になりたいっていう人が少なくなってきているからです。

運送業に限らず、ブルーカラーの職業になりたい人が減ってきていますね。

サービスはほしいけどやりたい人がいないという現状です。

それが今よりももっとひどくなっていく。

そうなると、その業界の価格が上がり、
価値が付いていくと思います。

『では、より新規参入していくんじゃないか?』
と思われると思うのですが、
より一層人は取れなくなってくると考えています。

なんとなく、今の若い子の働くマインドがデスクワークに行きがちです。

いろんな業界の人と話しますが、
どこも『うちの業界は人気がない』と口に出します。

どの業界もだと、
いったいどこに人がいるんだ?と疑問を持ってしまいます。

やっぱり中小企業のブルーカラー職じゃないところに人は
集まってきてしまっているのが現状です。

業界が人材不足になったら、
先ほど言ったように価値が上がってきますので、
生き残りさえすればより価値を上げて利益をしっかりと取れると思います。

これから生き残り戦略をしっかり立てることが大切です」

株式会社セイリョウのピンチ

①2023年、年末に起こった大事件

大量離職

2024年問題を目前に、株式会社セイリョウではその政策に向け、準備をしていました。

とは言っても、
弊社では、以前から2024年問題のようなことがあっても
耐えていけるようなシステムを構築していたので、
何も問題を感じていませんでした。

あとは2024年を迎えるだけと思っていた矢先、
大きな出来事が株式会社セイリョウを揺るがします。

それは前代未聞の大量離職です。

始まりはベテラン事務スタッフが急に退職を願い出たことからです。

理由は家庭の事情で仕事はできなくなってしまうという内容でした。

その後、そのスタッフと仲がよかった新人スタッフが退職願いを提出、
さらに新卒の若いスタッフが5人中4人退職届を提出してしまいました。

これからの株式会社セイリョウを背負っていける力が、
一気に失われてしまった瞬間でした。

表には見せなかった裏の顔

これは何かあったのではないかと思い、
そのベテランスタッフ退職後に、既存スタッフにヒアリングを行いました。

そうすると、ベテランスタッフの表には見せなかった、裏の顔を知りました。

例えば仕事をお願いすると、
表では「やります」と言っていたのが、
実際はやれていなかったということ。

そして、上司がいない場所で不の態度を露骨に出していたようだったのです。

そして、その裏と表の使い分けがすごく上手だったため、
社長や幹部は気がつくことができませんでした。

振り返ってみると、
確かに「あれ?」と思うシーンはありましたが、
些細なことだと思い、スルーしてしまっていました。

それをスルーせずにしっかりと向き合っていればよかったのかもしれません。

そして、それが若いスタッフに少なからず影響していたようです。

その人が発する愚痴に左右されてしまい、
周りのスタッフ、特に若いスタッフも気持ちが持っていかれてしまったようです。

そのベテランスタッフが辞める際、
若いスタッフに伝えた一言があります。

それ聞いた時、私はすごくショックを受けました。

その言葉とは「頑張ったけど、私が会社を変えられなくてごめんね」という言葉です。

たった一言だったけれど、大きな影響を若いスタッフ達に与えたなと思います。

この言葉を聞いた若いスタッフ達は次々と辞めていってしまいました。

この言葉を聴いて、若いスタッフはどんなことを思ったのだろう…
と今でも考えてしまいます。

ベテランだからとスルーしてはいけない

思い返せば、無意識にサインのようなものを送っていたのかもしれません。

それを私たちは「ベテランだから」「いつものことだから」と
“いつもの景色”と思ってスルーをしてしまっていました。

日ごろから常にマイナスな言葉を使う人には、
注目しないといけなかったのだと後悔しました。

そういう人は、
実はかなり深刻な状況だったと気がつかなければならなかったのだと。

そしてその深刻な状況は、
周りにも伝達され、知らぬ間に大変な状況まで傾くのだと思い知らされました。


②それでも残ってくれた光

雰囲気にのまれて同調

ベテランのスタッフが徐々に見せてきた、
小さく不可解な行動。本当に些細で日常的なものだったからこそ
「ベテランのあの人なら大丈夫だろう」「いつものこと」と思い、
スルーしてきてしまいました。

また、周りもその雰囲気にのまれ、
深く考えず、同調するようになってしまっていたようです。

意見に従わなければ何をされるかわからないという、
雰囲気が作り上げられてしまっていたように感じます。

肯定的な否定

やはり会社としてやってはいけない態度を、
本人としっかり向き合い
注意してかなければならなかったのだと反省しています。

誰にも言われなかったからこそ、好き勝手にやってしまったのだと思います。

必要だったのが「肯定的な否定をしていく」ということです。

問題点を肯定してそれを治させていく、
治すことができるように
促していくということが大切だったと思いました。

そして、しっかりと会社の価値観を共有し、
気持ちを変えてもらうことが、
組織内で働くために必要なことだと思いました。

入社の入り口を考え直す

株式会社セイリョウが今の状態になる前、
まだ“運送業のうんちゃん“のような会社をしていたころ、
今以上にたくさんの人材が退職していきました。

離職率は今よりも格段に上でした。

出ていってしまった分、
補充しないといけないため、
人数合わせ、
働く人の手をとにかく確保しないといけないため、
どんな人でも入れていました。

そのため、お金をもらえればいいという人材もどんどん入ってきました。

会社内の個々の目線はバラバラです。

その影響が、今回まで引きずり大量離職に繋がりました。

今後は、入社させる人材をしっかりと選定しないといけないのだと思いました。

「僕はやめる気はないです」

新卒で入社した若いスタッフが軒並み辞めてしまい、
残ったのはたった1人です。

その1人は本当に仕事がうまくいかず、どん底を経験しました。

社長の私が何度も注意をして、
どうして注意されたかを
課長が一緒に面談などで振り返りをしていきました。

その回数は実に41回。

そこまでいってしまったら、
逆にやめたくなるのではないかと思われるかもしれませんが、
彼はその分考える時間が多くなったため、
会社の価値観や自分が何をしなければいけないのかということを、
じっくりと見つめることができたようです。

そして、自分以外の新卒が辞めてしまった直後、
彼は私と新人育成チームのスタッフに
「僕はやめる気はないです」と言ってくれました。

今まで株式会社セイリョウでは
新卒のスタッフを中心に新人育成の研修を行ってきました。

それがしっかりと実ったのだと思い、
小さな光を感じることができました。

一筋の光を感じながらも、
これから辞めていってしまったスタッフの分を補うために、
人材を募集しなければなりません。

しかし、思いがけないピンチはこれからも続きました。


③泣きっ面に蜂、さらなる追い打ちとなる出来事

続くスタッフの退職

昨年末に起こってしまった大量離職。

「何とか残ったスタッフでやりくりをしていかないといけない」
と、日々考えていました。

スタッフに、より強い負担を与え過ぎないように、
しかし、利益を損なわないように、と考えを巡らせ、
スタッフ配置の変更も視野に入れていました。

とある入社1年目の事務スタッフに
部門異動してもらおうと思っていました。

そのスタッフは、頑張って日々業務をこなしてくれていたものの、
能力が追いついていないのではないかと判断し、
今回の考えにいたりました。

そう思っていた矢先、思いがけない言葉をそのスタッフから聞くことになります。

突然、そのスタッフから、
退職願いを出されてしまいました。

今までのように、能力の向上を臨んでいたため、
きっと苦しくなってしまっていたのだと思いました。

心が乱れる時

つくづく人材育成というのは難しいと感じました。

違うポジションであれば、
今よりも苦しくなくやっていけるのではないかと思っていましたが、
本人の中で気持ちは決まっていたのでしょう。

私も、昨年末の大量離職からなんとか気を取り直して頑張っていこうと思った矢先、
このようなことが起こってしまい、
いつもなら「こういう時は変わっていく時、変化していく時」
と前向きにとらえられるタイプなのですが、
感情が追いついていかず、心が乱れてしまっています。

こういう時は事故も起こしやすくなるので、
気をつけないといけないと思っているとこです。

入ってこない応募

昨年末から今年2月にかけてスタッフの退職が相次ぎ、
心も少し乱れてしまっているこの頃ですが、
そうクヨクヨしている場合ではありません。

人材は、すぐさま補充しないといけません。

いつものように、すぐに求人を出しました。

それは昨年末に引き続き行っていることです。

しかし、以前に比べて応募が少ない、
むしろ、応募がないに等しい状態です。

これはどこも人材不足に陥り、
他の企業も求人募集(求人広告、求人サイトへの載せ方)
について研究し始めたためであろうと考えています。

株式会社セイリョウが今まで行っていた求人への工夫が、
いよいよ通用しなくなってきたのだと思います。

人材確保のために…

今後も、株式会社セイリョウでは求人を出して人を呼び込もうと思っています。

しかし今までのやり方では何も進歩がありません。

そこで考えたことは「より目立つことをする」ということです。

もちろん、安直に目立つ広告を出す、
というわけではありません。

いろんなところに出向いて、
株式会社セイリョウにどんどん興味を持ってもらおうと考えています。

大切なのは株式会社セイリョウで何ができるか、
何が魅力かということです。

その魅力を存分に発信していきたいと思っています。


④株式会社セイリョウの魅力を発信する

運送業を通して人材育成をする会社

大量離職に伴う人材不足を補うために、
求人ではより目立つことをしていこうと考えている現状。

それは目立つ広告を出すわけではなく、
新卒採用を狙い、少しでも株式会社セイリョウに興味を持ってもらうことです。

そこでより強調して発信したいと考えていることは
「運送業を通して人材育成をしていける会社」だということです。

運送業という職種は、
まだまだ“トラックの運ちゃん”の印象を拭えません。

さらに中小企業では、
仕事をして利益を出してくれればそれでいい、
日常の業務内では利益を出すだけで精いっぱいだと、
丁寧に会社の研修やマナーを教えるということはあまりありません。

大企業に入らないと、そのような人材として成長できない、
勉強できないというイメージがあります。

そんな中で、運送業で社会人のマナーや仕事をする上での心構えが学べる
入りやすい中小企業だと発信していけば、
より意識の高い人材の確保ができるのではないかと考えています。

何をしにここに来たかがわかる人

なぜ、就職するのか、就職しなければならないのか。

その理由は人それぞれですが、
今まで株式会社セイリョウに入社してくれたスタッフを見ると、
長く続けてくれたスタッフ、すぐにやめてしまったスタッフ、
それぞれの考え方の傾向がわかってきました。

もちろん必ずしもそれに当てはまるわけではありませんが、
長く続ける人は
「ここに何をし(学び)に来たのかがわかっている」ということです。

そしてそれが日常の節々の言葉からもうかがえます。

そのようなスタッフは会社で起こることを自分のことのように話します。

「〇〇なことがあったんだよ」
『それじゃあ▲▲して直しいかないとダメですね。自分も気をつけます』ととらえます。

このようなスタッフは会社にとって、とても大切な存在になります。

しかし、なんとなく仕事を決めてきたという人は、
言葉の節々にどこか他人事ということをうかがえます。

しっかりと人材を厳選すること

以前は、後者のようなスタッフもかまわず入れていましたが、
長く務めてもらうためには、弊社の経営理念を知ってもらい、
それに賛同してくれる人を入社させることが大切だと思いました。

残ってくれた従業員の中で「僕はやめませんから」と言ってくれた子のように、
経営理念を理解し、弊社の考えに賛同してくれるスタッフで、
より新しい株式会社セイリョウを作っていきたいと考えています。


⑤マイルールに縛られていた現状からの脱却1

新しい方の入社

大量離職があった期間から、約5カ月が経ちました。

新しい人材が株式会社セイリョウに入社し、少しずつ社内が変化しはじめてきました。

結論から言うと、すごく良い方向に向かっています。今回そのお話をさせていただきます。

人の移り変わりが激しい中で見えてきたこと

大量離職の中心に立っていた配送事務のスタッフがいました。

仮にそのスタッフをAさんとします。

Aさんは週5で入っていて大変スピーディーに仕事をこなす方でした。

ミスもなく、仕事をしていたので、たくさんの方から信頼を置かれていました。

そのスタッフと、
そのスタッフの後に入社した週3で仕事に入るBさんがいました。

Bさんは後にAさんより、仕事の引継ぎをされます。

しかし、他人から見ても、これを週3のBさんが全てをこなすことは無理です。

もちろん、スタッフ募集をかけます。

それと同時に、業務を見直し改善をしていくことも行いました。

Aさんから引き継いだ莫大な業務内容の中には、Aさん独自のルールがありました。

そのAさんのマイルールは、正直やらなければやらなくてもいい内容だったのです。

しかし、昔からやっていることだったり、Aさん自身がそれをやることによって、
業務のやりやすさを感じたりして、余計な仕事もマスト業務だと思ってやっていたようです。

もちろん、そのAさんのマイルールもBさんの引継ぎの中に入っていました。

そのマイルールがそのまま伝わってしまったことにより、
Bさんは全く仕事が終わらない上に、ミスも多くなりました。

これを改善しようと、業務見直しをBさんに掛け合ったのですが、
ずっとそのマイルール付きの業務をしていたので、
それで定着してしまい、変えることができないと言われてしまいました。

新たに入ったCさんとDさん

大量離職で至急開始した求人に、Cさんが入社しました。

新しく入社したCさんは週3での勤務になります。

しばらくBさんとCさんでAさんがやっていた仕事をしていたのですが、
その後にBさんが全く別の理由で退職することになりました。

Cさんがひとりになってしまうというところで、
Dさんが入社してくれました。

そのDさんは週5で18:00までの勤務です。

本当にありがたい人材だと思いました。

配送事務のメンバーが一新したので、
ここで業務の見直しができる大きなチャンスができました。

後に入ってきたCさんは、
配送事務の現状を見て
「変えていきたい」「改善した方がいい」と考えていたそうです。

新たに入社したCさんとDさんとともに、
話し合いをしました。

そして、いらないルールを省いたり、
やらなくていい仕事を見直したりして、
以前の「会社としてやってほしい業務内容」だけにすることにしました。

すると、1つの業務にかかる時間が少なくなり、
大変スムーズな仕事の運びに改善しました。


⑥マイルールに縛られていた現状からの脱却2

不要なマストを作って人に強いていた

会社が指示していたのは、必要最低限の業務でした。

しかし、それ以外のことも必要と感じ、
やらなければやらなくても良い業務をマストの業務だとして、
マイルールを作ってしまったAさん。

Bさんと一緒に仕事をしていた時、
そのマイルールも、Bさんに強いていました。

そのマイルールはAさんが必要だと思って、
Aさんが始めたことなので、
Aさんの能力値の中でやる分にはいいのですが、そ
れを人にも強いてしまうと、強いられた人の能力値に合わず、
業務のミスや遅延が起こってしまいます。

現にBさんがそうでした。

実は別の古参のスタッフも、
その業務を行っていたことがあったのですが、
その際にはそんなに大変な作業だとは思わなかったそうです。

僕自身も新しく入社した人に
「配送事務は簡単な作業だから」と話して、
業務に就かせていたのですが、
そのAさんが「簡単じゃないですよ!」と言いました。

そして、その反応に対し、
「そんなに大変なのであれば業務を見直そうか?」と話しをすると
「社長はわかっていない」と言われ、
見直しの方向へ進むことができませんでした。

そして今、スタッフが一新した配送事務は、業務を見直すことに成功しました。

現場でも起こっているマイルール

今回のようなマイルールは配送事務に限ったことではありません。

ドライバーの現場でも起こっています。

例えば8時間で終わる仕事が、
朝3時~14時までかかってしまう人がいた場合、
だいたいはいらないマイルールを作り、
仕事が終わらないということが多々あります。

中小企業の悩みのひとつなのですが、
このような生産性の低さに気がついても、
人手や時間により手を加えられることは難しいのが現状です。

なので、マイルールを作っても、
仕事を回すことができる人を大事にしてしまいます。

1日やれることを細分化、どんな方でもできる仕事内容

そこで、セイリョウでは仕事を、
細分化して見えるようにするということをし始めました。

そうすることによって、
その仕事は誰かにしかできないという状況をなくすことができるのです。

それをすることによって、誰かが休んでも、
その日は別の人がやればいいという様態です。

そのためには、マイルールはなくさないといけません。

もともとは2008年に作ったマニュアルがあります。

それを見て少しの指導時間を用いれば誰でもできる様に
作った内容なのです。

新たにマイルールを作らないといけないと
終わることができないという仕事ではないのです。

2008年に作ったそのマニュアルは、
誰でもできる安定した仕事の仕組みを元に作られたものです。

そのマニュアルでどんな方でも仕事ができる環境が成功していくと思います。

Yesマンは有能

昔は、会社が言っていることを聴く
「Yesマン」はダサいと言われていた風潮がありました。

しかし、今回のように生産性の低いマイルールに、
自他ともに縛られてしまう人よりは、
会社が指示したことを素直に行ってくれるYesマンの方が、
やはり会社としてはありがたい存在だと思います。

そのいい意味でのYesマン、
すなわち会社の方向性を理解しているスタッフさん達が増える事が
会社の利益を生み、
会社を育てていってくれるのではないかと考えています。


⑦マイルールが作られてしまう人材の傾向

管理職の暴走

株式会社セイリョウで起こってしまった、
古株のスタッフによるマイルール作り。

会社のルールがしっかりとあるにも関わらず、
さまざまな理由を付けて、
そのマイルールで仕事をするということが起こっていました。

これは何も株式会社セイリョウだけが
特別に起こったことではないということがわかりました。

他社の幹部の人と話をすると、
同様のことが他企業でも起こっているそうです。

このマイルールが作られ、
本来の会社のルールがわからなくなったり、
企業がうまく回らなくなったりしてしまうことが多々あると聞きました。

特に多いのは管理職が自分の地位を使い、
簡単な方に業務を進める
マイルールを作ってしまうということです。

この管理職の暴走により、
業務の生産性が落ちたり、
成績が上がらなくなったりすることがあります。

しかし、なぜそうなってしまうのか、
結果が伴わないのか、
その原因が実は管理職のマイルール作りが
原因だということの発見に至らないことがあります。

そして気が付けば、
全体の統率が取れなくなってしまうということがあります。
どれが正しいルールなのかが見えなくなってしまい、
社内は混乱の渦になります。

決めたルールを守れなくなってしまったら、
組織はダメになってしまうのです。

声が大きい人に寄っていく傾向

このようなマイルールを作ってしまう人の傾向として、
自分の意見をはっきりと言う、
声の大きい人が多いイメージです。

そのような人の周りには人が寄ってきます。

なんとなく「あの人が言っているから正しいのではないか」と
その人へと寄っていきます。

中には、会社のルールをしっかりと見据えて
「会社のルールはこっちだ」と
疑問を持って仕事をしている人もいました。

しかし、その人も決して声の大きい人ではなかったので、
会社のルールを守りつつ、
マイルールでやっている声の大きな人の方にも
気をつかいながら仕事をしていました。

正しく仕事をしている人には余計な負担をかけていたと思います。

マイルールができた時にわかる要素

マイルールで業務をしていたスタッフがいたことは事実でした。

今思い返してみたら、
要所に「あれ?」と思うシーンがいくつもありました。

完全に隠しきれていなかった表情やしぐさが、
実は垣間見ることができた場面があったのです。

しかし、誰も疑問に思いませんでした。
「あの人なら大丈夫だ」「あの人のことだから心配ない」と
思い込んでいたのです。

株式会社セイリョウのルーティーンの中には
それがわかる要素がちりばめられていると思いました。

朝礼や会議、委員会活動など、
通常業務以外にもさまざまな業務を行っています。

そうすると、
「朝礼の時の言動が変だった」
「あんな答え方をするということは
会社が提示したやり方に沿ってやっていないんじゃないか?」と
疑問に持つことのできるチャンスが多々あります。

あとは、
スタッフや上司がそれに気がつくかどうかなのだと思いました。


⑧ルーティーン化することで強い企業に

ルール以外は強制させない

マイルールを作って仕事をしていた件に限らず、
「あの人最近おかしいぞ」と
気がつける環境かどうかの中に「強制感」というのがあります。

株式会社セイリョウは1日の仕事に対して、
あまり強制感を与えるということはありません。

もちろん全て自由にしていいというわけではなく、
会社のルールに則って業務をし、
ある程度の節度を持って
過ごしてくれればそれでいいとしています。

そのくらいシンプルな考えで、従業員に接しています。

厳しい会社にあるような、
何にでも強制をさせてしまう環境だと、
人はその場を凌ぐために隠したりいい顔をしたりします。

それによって、正しいことが見えなくなってしまいます。

シンプルな考えが、
さまざまな歯車の軋みを感じとることができるのではないかと思います。

マイルールを作る人の癖

マイルールを作りがちな人は、
与えられた仕事を自由にやりたいと考える人だと思いました。

というのも、業務を仕組化する際に、
必ずその人に反対されていたのです。

「ルーティーンにするために仕組化した方がいいよ」と
会議で話をしても「いや…」と反対されてきました。

マイルールを作る人は、
ルーティーン化されることを嫌います。

そうしてしまうと、自分のやり方で自由にできないからです。

しかし、それを許してしまうと、
困ったことに、他の人にもその業務を引き継ぐことができないのです。

そして、相談の仕方も違います。

例えば、どうしても業務が終わらず、
引継ぎをしないといけない場合、
しっかりルーティーン化したやり方で
業務をこなす人はできていない業務の内容も明確で、
お願いされた方も
その手順に沿ってやっていけば終わります。

しかし、マイルールでやっていた人は、
まず説明が長く、どこかふわふわした状態で業務を投げ、
頼まれた方も何をすればいいかわからずに
業務が完了しなかったということが多々ありました。

自由に業務をしたいという甘えで、
円滑に業務を引き継げるのかどうかの差も生れてしまうのです。

ルーティーン化によるデメリット

ルーティーンによる仕組化をしたことにより、
デメリットも生じます。

それは緊急対応や臨機応変な対応を求められる際に、
すぐに対応できなかったり、
完了まで至らなかったりすることが出てきてしまうということです。

今はルーティーンに沿って
仕事をこなすメンバーで頑張って業務をおこなっているので、
トラブルや臨機応変に対応しなければならないことに関しては
得意ではないと思います。

そういうことは僕に集まってきてしまいます。

今後、臨機応変に対応できる組織になる為には、
徹底的なジョブローテーションを行う必要があると考えています。

ひとつのポジションだけではなく、
期間を決めていろんな部署を体験させるということです。

各ポジションのルーティーンを身体にしみこませることによって、
その部署の人がいなくとも業務が滞らないようになると思います。

万が一、僕が明日から入院してしまう、
なんてことが起こっても、
トラブルの対応もしっかりとできる、強い組織になっていくと思います。

その中でも得意不得意があるので、
得意なことを見出して伸ばしていき、
不得意なことはそこそこできるようにする。

そこまですれば、十分なのではないかと考えています。

社長の人生と会社の人生

-2014年の振返り-

【さあ頑張るぞと思った矢先の第2回大量離職】

 2014年3月ごろに、外部研修の企業と出会い、経営のあり方、会社のあり方を学び
「さあこれから頑張っていくぞ」と思った矢先、同年12月でした。

幹部のひとりである、僕の弟が「辞めたい」と言ってきたのです。

明確な理由はわかりませんでした。

しかし、母の逝去、家庭内のいざこざが重なり、
社内の少しの不安でさえも大きなストレスに感じていたのでしょう。

当時、弟も研修へ行く段取りを組んでいたので、その急な申し出に本当に驚きました。

 母親も亡くなった矢先でもあったので、
まさかこんなにも人を失ってしまうのかと本当に悶えました。

その時の心情は-10です。

 さらに弟は幹部です。
弟を慕っていた多くの従業員も辞めていきました。

第2回目の大量離職です。

しかし、この時の気持ちは-8です。

今までのさまざまな負の連鎖、大量離職を体験していたため、気持ちの準備をしていました。

今回の大量離職ではそこまで落ち込むことはありませんでした。

【弟がNOと言っていたことを掘り下げる】

 幹部として動いてくれていた弟が退職してしまったのですが、
そう立ち止まっているわけにはいきません。

退職の本当の理由はわかりませんが、
弟と僕との間に、経営に対する考え方の違いはあったと思っています。

前進をしていくために、弟がNOと言っていたことを深堀して、
課題を見つけて解決していこうと前向きな気持ちになりました。

 実は2014年は、経営においてさまざまな変化をさせていた時期でもありました。

初めて新卒をとったり、社風改善や価値観育成をしたりと、
まるでインナーマッスルを鍛えるかのように、会社の根幹を変えていきました。

弟は「勉強をするよりも現場やれよ」という現場人間の考えだったので、
そこが弟にとってはやりづらかったのかなと思いました。

しかし、きちんとした組織作りをするためには、このようなことが必要だと思いました。

【2016年幹部NO.3が退職】

 弟が辞めた2年後に最後の幹部が辞めました。

4人いた幹部のうち、僕意外の3人が会社から離れていきました。

さすがに、僕が何か原因があるのではないかと、
かなり落ち込みました。この時の感情はー10です。

 この時の彼も、きっかけは家庭の事情でした。

家庭でうまくいかないことが起こっている時に、
仕事への不満が募ってしまい、退職へつながってしまったのだと思います。

それが手に取ってわかるかのように、彼を絡めたもめごとも多くなりました。

人を辞めさせたり、人ともめたりすることが起こるようになりました。

 その時に、会社のトップの僕が白黒をつけるわけです。

正しいことは正しい、正しくないことは正しくないとはっきりと答えを伝えます。

もちろん、彼の身勝手な行動で始まったもめごとの場合は
「君が悪い」とはっきり告げます。

そうすると
「なぜ味方になってくれない」「なんでかばってくれない」
という感情が芽生え、最終的には退職へつながってしまいました。

 彼の場合は、彼を追って辞めていくような大量離職はありませんでした。

【NO.3の代わりをパートに】

 当時、幹部のNO.3が担っていたのは、総務の仕事でした。

この総務の穴をどのように埋めるかという事を考えました。

この穴を埋めるために、今いるメンバーでどうにかしないといけません。

人がいなくなった時、
特に大事なポストに穴が開いてしまった時、考え方を変えるチャンスでもありました。

果たしてその場所は、本当に幹部や社員だけがやらなければならないのか。

今までは、絶対に上層部がやらなければならないと思い込んでいましたが、
実際にいなくなったらいなくなったで、その穴を埋める人は、
その業務さえできてしまえばパートでもいいという答えに達しました。

もちろん、業務の中には、その役職に就いた人しかできない仕事もあります。

しかし、今回の総務は誰でもできるような業務でした。

それを、複数人でできるようにしたことにより、穴が埋まっていきました。

【得るは捨つるにあり】

 幹部の退職、それに伴う大量離職。

それを体験して、
何かを得るためにはまずは失う(捨てる)ことが必要なのだとしみじみ思いました。

捨てないで「なんでも得よう」としてもうまくはいきません。

コップにたくさんの水が入っている状態で、さらに水を足すことはできません。

少しコップの水を減らしてから、水を入れることができるようになるのです。

 そのたびに会社が変わっていくことを体験し、今いる古参のメンバーもそれを見て来ました。

まさに、ピンチになってしまった時は、変わるチャンスなのだと、この年表を見て思いました。

【伝える勇気を持つ】

 今までどんな人材でも、クビにするということはしてきませんでした。

縁を断ち切りたくないと思う僕が、最も苦手とするところです。

 しかし、そう思っていても、今まで経験から、
「察してほしい」「いつか気づくだろう」という期待を持つことはせずに、
しっかりと伝えることはしていこうと理と気がつきました。

 そのためには、まず株式会社セイリョウの枠組みを
しっかりとすることが大切なのではないかと考えています。

それを軸として、
弊社の枠組みに合わない人にはしっかりと教えてあげるということをしていきたいです。

 「人は頑張ればなんとかなる」という考えは捨てきれません。

しかし、弊社の枠にはまっていない人にいくら
「がんばれ」と言っても、お互いが疲れてしまいますし、
そこで結果退職を選んでしまったら、頑張った時間も無駄になってしまいます。

もちろん極力は言いたくありません。

しかし、社長の僕がしっかりと伝えることが大切なのだと思っています。

【しっかりと見極めをしていく】

 株式会社セイリョウで働いていく人材の線引きはもちろんですが、
今後は役職や役員の見極めもしていきたいと思っています。

 今までは長く働いているから、
近くに助けてくれる人が欲しいからという理由で役員を無理やり配置していました。

その人の能力を考えず、
全て会社の都合でその人に任せていたと思っています。

今考えると、人間性や能力を見た時に、
役員になるには力不足だったのではないかと思う人もいました。

その人の能力や結果を見て、頑張らなければいけない段階なのか、
そこまで至らない段階なのか、その見極めをして、必要であれば役員投与もしていく。

そのような仕組み作りや見極めをしていきたいと思っています。

【大人数よりもちょうどいい人数で】

 能力の見極めは従業員にも言えることです。

「この人の能力では、正社員よりもパートとしてやっていった方がいいのではないか?」
と思ったら、そのように促したり、
逆に「社員として働けないだろうか?」と評価したりしていきたいと考えています。

ある意味ランク付けのようなものです。

 そのようにしていくと、おそらく人は集まりづらくなってしまうと思います。

しかし、現状では大人数で会社を拡大していこうとは考えていません。

ちょうどいい人数で土台をしっかりと作って、
売り上げを伸ばしていきたいと思っています。

 売り上げの面でも、
大量離職した時に売り上げが伸びました。

なぜか逆に社風に合わない人がたくさんいた時の方が、
トラブルも多くコストもかかっていました。

また、結局のところ、
大人数になってくると僕との考えの溝もできやすくなってきて、
トラブルも起きやすくなってきたのだと思いました。

 
【僕が楽しいと思うチームを】

 山あり谷ありを経て、
現在も成長途中の株式会社セイリョウですが、
今が一番良い人材バランスになっているなと感じます。

やはり、社長である僕が従業員に気をつかっていて、
僕がやりたいことを我慢している。

さらに従業員の方が
やりたい放題やっているという状況は良いものではありませんでした。

 少なからず我が社においては、
会社のことを四六時中考えているのは僕だと思っています。

僕が経営について導き出した答えは、あながち間違いではありませんでした。

だからこそ、僕が楽しくなってくるチームを作ることが大切なのだと考えています。

 「みんな僕のために働け」と王様になるつもりはありません。

僕がしたいことに対して、応援してくれる、協力してくれる、
作り上げていってくれるチームが、株式会社セイリョウが良くなっていく秘訣なのだと思います。